偽りの愛は深緑に染まる

「お前さ、何であの仕事してんの? 金にでも困ってるから?」

 あの仕事、とはもちろん愛人業のことだろう。

 金に困っているから。あながち嘘でもない。実家はあまり収入の多い方ではなく、梨沙の下に妹と弟もいる。いろいろと費用も必要になるので、実家にはなるべくたくさんお金を入れたいと思っていた。

 しかし、本当のところはやはりーー。

「……別に、生活していけないほど金に困ってたわけじゃない。話を持ち出されたからホイホイついてっただけ。要するにそそのかされたの」

「軽っ。騙されてんじゃねーの」

「いや、もう1年もちゃんと貰ってる」

「ふーん、じゃあ今日はお前の奢りな」

「えー!?」

「バリバリ稼いでんだろ?」

 まあ、別に3千円くらいまでなら、許してもいいか。と思ったが、駄目だ。これにつけこまれてあとあと大金を搾り取られたりしたらたまったもんじゃない。

 深呼吸をして、梨沙は佐渡山に言った。

「ちょっと待って。決めておこう。どこまでの要求を許容範囲とするか、とか」
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