偽りの愛は深緑に染まる
「何だって?」

「もう一度申し上げましょうか」

「いや……いい。続けてくれ」

「しかも、これはあくまで私の主観になってしまいますが、佐渡山は夏目様を、社長との関係を材料に脅しているのではないかと。佐渡山と夏目様のやりとりを、数分間録音したのがこちらです」

滝口はポケットからボイスレコーダーを取り出し、再生する。

それを聞いた光流は、みるみるうちに表情を変えた。

「……私の報告は以上です。追加で何かありますか?」

「……いや、いい。あとは私でやっておく。ご苦労だった」

「では、失礼します」

重いドアが静かに閉まり、滝口は出て行った。

眼下に広がる夜景を睨みながら、光流はどう手を打とうか考えるために、怒りを鎮めようと必死だった。

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