偽りの愛は深緑に染まる

 翌日。休日だが早めに起きて朝食を作る。目玉焼きが焼けるいい匂いがすると、何でもうまくいくような気がするのはなぜだろう。

 天気のいい日だ。朝食を食べて洗濯物を干し、花に水をやる。鼻歌を歌いながら部屋の掃除。

 一通り用事が終わり、時計を見るとまだ8時前だった。1時に待ち合わせ場所に着くには12時に出れば余裕。仕度する時間を考えても、3時間ほどある。

「そうだ」

 いいこと思いついた、と梨沙はにやっとする。

 ああでも、光流さんは甘い物は好きじゃないかも。彼がそんなものを食べているのは見たことがない。

「それならお弁当にしてみようか……」

 梨沙は料理にはかなりの自信があった。家庭料理からお菓子から外国の凝った料理まで、何でも作れるし、それが唯一の趣味でもあるのだ。

 マンネリ化してはだめだ。それに、光流さんが連れて行ってくれるおしゃれなレストランにも飽きてきたところだ。

 とにかく、なにか新しいことをして、彼を飽きさせないようにしなければ。
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