その結婚、取扱い注意!
ゆっくりと少しずつ前へ進む列。

頬に当たる北風が凍りつきそうなほど冷たくて、早くこたつに胸まで入りたくなる。

美里ママからもらったファーのついた手袋とファーのマフラーをもってしてもこの寒さには耐えがたいものがある。

湊を見ると、手袋をしていない両手を深緑色のダウンジャケットのポケットに入れている。

おしゃれに余念がない湊だけど、意外と小物は身につけない。

特に手袋なんかは忘れてきたり、どこかへ落としたりしてしまうのでいらないのだそう。

でも寒いよね。

私は右手の手袋を外すと、湊のポケットに入れた。

「ん?」

前を向いていた湊が私を見下ろす。

見下ろしながらも、ポケットの中でしっかり恋人つなぎをしてくれる。

「ミミの手、温かいな」
「でしょ?」

私はにっこり湊に笑う。

「こんなに寒いとロンドンを思い出すな」
「うん。またいつか行けるといいな」
「ああ。行こうな」

まだ戻って来たばかりだから今のところ湊の出張はないけれど、また頻繁にニューヨークやロンドンへ行くんだろうな。

付いていくわけにはいかないから、今からそれを考えると寂しい。

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