その結婚、取扱い注意!
じわりじわりと参拝の列が進んでいる。

参拝を待つ列の両側には屋台。

ここへ来るまではいろいろ食べたいと思っていたのに、色々な匂いが混じりかすかに胃が暴れはじめる。

あれ? どうしたんだろう……。

私は空いている左手で黄色い帯の上から擦る。

何度か擦っていると、湊が聞いてくる。

「帯が苦しいのか? さっきから擦ってどうかした?」
「ちょっと胃がむかむかして……」

羽織の下だからわからないと思っていたけれど、手を繋いでいたから微かな揺れを感じたみたい。

「食べすぎ?」
「うん、そうだと思う。酢れんこん、消化できていないのかも」
「大丈夫か? とりあえず家に戻って、夜にでも来る?」
「ううん。吐きそうなほどじゃないから大丈夫だよ」
「そうか?」
「うん。あー、屋台のお好み焼き、食べたかったのに」
「気持ち悪いくせに、食べ物のことかよ。ほんと、ミミは色気より食い気だな」

湊はそう言ってからかう。

もしかして、からかうモードにスイッチオン?

さらに

「夕食はなんだろうな。おそらくカニとすき焼きと……ミミ、治らなかったら残念だな」

本当は心配しているのだろうけれど、からかってくる。

< 34 / 155 >

この作品をシェア

pagetop