その結婚、取扱い注意!
ブライダルサロンを出て、ウエディングドレスやお色直しのドレスが陳列された廊下を歩いていると、向こうの方から驚く人が男性と腕を組んで歩いてきた。

思わず足を止めて、良く似た人なのかとまじまじと見てしまうと、向こうから来た女性も私たちに気づいて慌てるようなそぶりを見せる。

「松下さん……」

私の呟きにボブカットの松下さんにようやく湊も気づいたよう。

「こんな場所でばったり会うなんて……」

松下さんも呟くと、隣の男性に開き直ったような笑みを向ける。

「俊之(トシユキ)さん、会社の同僚の本田美海さんと旦那様の湊さんです」

落ち着いた雰囲気の男性はかっちりスーツを着ており、品が良さそうな笑みを浮かべ頷いた。年は35,6歳だろうか。

「本田さん、こちらは私の婚約者の西條さんよ」

婚約者!?

驚きながらも、婚約者の西條さんに頭を下げる。

「本田と申します」
「西條さん……?」

私が挨拶している隣で湊は少し考えてから、大きく頷いた。

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