その結婚、取扱い注意!
「確かこのホテルの社長の西條さんですよね」

湊が言うと、西條さんは驚いたように目を大きくする。

「さすが湊ね。彼はこのホテルの社長よ」

松下さんは満足そうににっこり笑って湊を褒める。

「さつきさん、彼は……?」

自分の正体を当てられたのに驚いたのだろう。西條さんは松下さんに聞いている。

「彼は優秀なトレーダーなのよ」
「それでか。いやぁ。すぐに私のことがわかるとは驚きましたよ」
「経済誌でお見かけしたことがありますから」

西條さんは湊が気に入ったようで、手を差し出しふたりは握手する。

「本田さん、ここで結婚式を挙げるのね?」

松下さんは湊の持っているホテルのロゴが入った紙袋を見てそう考えたよう。
この先はブライダルサロンしかないので、それからも推測できるし。

「そうなんです。すごい偶然です。松下さんもブライダルサロンに用があるんですよね?」

婚約をしていると聞いたから、自分のホテルで結婚式を挙げるのだと推測した。

「そうなの。実は9月に挙式することになって」

松下さんは恥ずかしそうに頬をほんのりピンク色に染めている。

「わぁ。おめでとうございます」
「ありがとう」

さすが大手旅行会社の令嬢。結婚相手はホテルの御曹司。セレブを絵に描いたようなカップルだ。


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