恋が運ばれて
「紗由はどうして家族のために作ってやらなかったんだ?」

「家族をないがしろにして自分に甘えてた。仕事なんていつでも出来ることなのに私は一番大切なものを無くしてしまった。今頃思っても遅いけど。」

「俺は男だから旦那の味方だ。息子の思いもちゃんとわかる。紗由が俺の妻だったら一生許せないと思う。」

「わかってる。私にはもう何もないわ。でも皮肉なことに今まで欲しくても持てなかった一人だけの時間がたっぷりできたわ。それがどんなに空しいかを味わっているところよ。」

「そうか、味わい尽くした方がいい。」

「どうしてそんな風に言うの?」

「そんな中にも何かがあるからだ。その何かを見つけられるか見つけられないかは、その人間によるんだ。」

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