恋が運ばれて
「俺にとって、好き勝手に生きてきた親父よりも今が大事なんだ。目の前にいる紗由の方が大事だ。」

「えっ、私?」

「大丈夫、親父のそばにはいつだってお袋がいる。愛人は単なる愛人でしかない。」

「でももう最後かもしれないんでしょ?自分から行くのが嫌なら、お母様のために行ってあげて!お母様の思いを考えたことあるでしょ?頼れるあなたが外で好きなことをしているのを見守ってくれているのはお母様のお力じゃないの?早く行ってちょうだい!あとで後悔しても遅いのよ、私みたいに。」

「紗由、まだ数時間しか付き合いないのにまるで何年も前から知っているようだな、俺たち。」

「何のん気なことを言ってんのよ!私、待ってるから。」

「今の言葉、本当だな?約束は破るなよ。必ずここに帰ってくる。その時、紗由を抱かせてくれ。」

「いいわ、約束するわ。」

「それと、今度来たら何を食わせてもらおうか?」

「私でしょ?」

「ビンゴだ!」

< 17 / 27 >

この作品をシェア

pagetop