封船屋
大分その店にいたらしい。空が夕焼けの赤から闇に変わり始めてきた。そろそろ帰ろうと思った。
そう考えていたとき、ふとふうさんの出てきた扉が目に入った。

“封船あります”
端がぼろぼろになり日に焼けた紙に、墨で書かれていた。創業からそこにある様に思う。

「あの、そこにかいてある“封船”って何ですか?」

「え?あぁ、この張り紙のことね。
これは“思い”を封じ込める秘密の宝箱よ。海音さんがまた来てくれるのなら、詳しく教えてあげる。」

よく分からなかったが、なぜか詳しく聞くことが出来なかった。いや、寧ろ聞いてはいけない気がした。
ふうさんの言葉は優しいながらも、見えない力が込められているように感じた。だから聞けなかった。

それに、まだ出会ったばかりで質問攻めもいかがなものかと思い、色々聞きかけた言葉を飲み込んだ。

また来れば教えてくれるという言葉を信じ、明日でもまた来ることにして、封船屋を後にした。

いつもと同じ帰り道なのに、全てが少し綺麗に見えた
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