冷たい上司の秘密の誘惑
「…何で放っておいてくれなかったんですか?」

窓の外を見たまま呟く。


「放っておけないな、オレの部下だし」

「…大事な人と、待ち合わせでもしてたんじゃないんですか?」


「・・・は?」

私の言葉に、驚いてる声を出した篠田部長。


「・・・そのテイファニーの袋」

「・・・あぁ。まぁ、大事な人と言えば、大事な人の物だが、

今日は何の待ち合わせもしてない」

「・・・・」

・・・やっぱり。そうだったんだ。篠田部長には、大事な人がいる。

…悶々とした気持ちのまま、気が付けば、マンションの前に着いていた。


「…すみません、ありがとうございました」

「・・・なぁ」

「・・・なんですか?」

・・・行こうとする私の手首をガシッと捕まえた篠田部長。

ドキドキして、篠田部長の顔を見る事すらできない。


「テイファニーの君に嫉妬してるのか?」

「・・・な、そんなわけないじゃないですか?」


「じゃあ、オレの目を見て違うって言えよ」

「ちが・・・」

目を見た途端、それ以上の言葉が出なかった。

違うって言えない・・・その通りだから。
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