極上エリートの甘美な溺愛
「そう……。父さんのこと、知ってるんだね」
「そりゃ、有名だからな、知ってるよ。そっか、新車のパンフレットの写真撮ってるんだな」
息をつめて真剣にシャッターを切る理市。
その姿を必死に見つめる玲華。
ショールームは、息詰まるような緊張感と、絶え間なく切られるシャッター音に支配され、遠くから見ているとはいえ、玲華と将平にも身動き一つ許さない空気を感じた。
「はい、OKです。10分休憩します」
アシスタントだろう人の声が張りつめた空気を一気に解放し、玲華の父も、その表情を緩めていた。
いい写真が撮れたのか、スタッフと言葉を交わしながら大きな笑顔を浮かべる父親をしばらく見たあと、玲華はそっと、ショールームの外に出た。
その表情は、和んでいて、先ほどまでの硬いものはなくなっていた。
「父さんが仕事をしている姿、初めて生で見た。写真の事はよくわかんないけど、父さんが頑張ってるのはよくわかった、かな」
「俺もびっくりだよ。玲華の父親があんな有名人なんてさ」
「ま、私の美術の点数見たら絶対連想しないよね。芸術的センスゼロだもん」
「そんなの関係ねえよ。玲華には玲華の得意なもんがあるんだからさ」
「私の得意なのって理数系。親と正反対なんだよね」
「俺の親なんて車の免許も持ってない。でも、俺の夢は車のデザインだし、カエルの子はカエルってわけじゃないんだよ」
あっけらかんと話す将平の言葉に、玲華は思わずはっと視線を上げた。