極上エリートの甘美な溺愛
「玲華の夢が、親と全く違う道だとしても、それはそれでありがちなことだと思うけどなあ」
「そう……かな」
「そりゃそうだろ。じゃなきゃ、医者の子供はみんな医者。スポーツ選手の子供はみんなスポーツ選手を目指さなきゃならないだろ?そんなのおかしいし」
将平は相変わらず視線をショールームの自動車に向けながら、なんてことないように呟いていた。
将平にとっては、両親が自動車免許を持っていなくても自分は自動車が好きだからというだけで将来を見据えている。
そして、その思いに迷いは感じられず、自動車を目の前にした表情もあまりにも輝いていて目が離せない。
「くそー。俺も早くここで働きたい」
悔しげにつぶやき、唇をぎゅっと結んだ横顔は、玲華の気持ちを揺らすには十分なもの。
将平の言葉とその強い思いによって、玲華の心の中には微かなすき間ができたようだった。
大勢の仲間の一人。
お互いをそう思って過ごしているのは確かで、玲華にしてみれば、自分のようなおとなしく目立たない人間が、将平のように周囲から注目され、女の子からも人気がある人間との接点を持つなんて不思議で仕方がない。
そして、将平と距離を詰めようとも、個人的に自分を受け入れてもらおうとも思った事はなかったけれど、なんの戸惑いも見せず玲華に自分の思いを明かす将平といると、将平のことを何も知らなかったと実感した。