極上エリートの甘美な溺愛

その時、ベンチでぼんやりとしている玲華に気付いた将平が、声をかけてきた。

「帰らねえの?」

「え?」

「珍しいじゃん。いつも希美とかと一緒に帰ってるのに。おいてけぼりか?」

「ううん。なんとなく帰る気にならなくて」

「ふうん」

職員室で先生と話をしていて遅くなったという将平が、そのまま玲華の隣に腰を下ろした。

けれど、それ以上言葉を交わすわけでもなく、二人で野球部の練習をただじっと見ていた。

普段なら、とっくに予備校に行かなくてはいけない時間。

それは将平にとっても同じはずだった。

それなのに、どうしてここで自分と一緒にぼんやりとしているんだろうかと玲華は気まずさの中で考えていた。

そして、二人きりになることなんて滅多にない将平と一緒にいることが、意外に平気だと気づき妙にそわそわする。

「海東くんは?まだ帰らないの?」

「帰るよ。……でも、今日はもう予備校はサボろうかな。あ、家に帰る気にならないなら、ついてくる?」

「え?どこに?」

「ん?俺が目標としている場所」

夕日を背にして大きく笑った将平は、一人納得しながら頷くと、すっと立ち上がった。

「時間があれば、来いよ」

「……あ、うん」

いつもならきっと断っているはずだけど、と思いながらも、将平の笑顔にぐっと気持ちを掴まれた玲華は、気付けば既に歩き出した将平の背を追いかけていた。
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