極上エリートの甘美な溺愛

電車を乗り継ぎ、玲華が将平に連れてこられたのは、20階建てのビルだった。

天井が高い1階は、一面ガラス張りの自動車のショールームで、かなりの台数の自動車が展示されていた。

将平は、ショールームの入口から中を食い入るように見つめ目を輝かせていた。

中に展示されている自動車に熱い視線を投げながら、独り言のようにつぶやく。

「俺、将来は自動車のデザインがしたいんだ」

その言葉につられるように将平の横顔を見ると、学校では見ることのない子供っぽい表情の将平がいた。

「あ……そうなんだ」

玲華は、何故かどきりとときめいた自分の感情に蓋をするように、慌ててそう答えた。

ふたりきりで親しく言葉を交わすことが滅多にないせいか、どんな顔でこの状況を受け止めればいいのか戸惑う。

そして、玲華はそんな感情を隠すように再び自動車へと視線を戻した。

自動車に全く興味がない玲華には、どれも同じようにしか見えないが、傍らの将平は、どの自動車にも個性があり、違いがあると熱く語り始める。

けれど玲華にしてみれば、並ぶ自動車を指差され、セダンやワゴンという自動車のタイプを教えられてもぴんとこないし、排気量と言われても「へえ」としか答えられない。

どこか気持ちのこもらない言葉を返す玲華に構うことなく将平は機嫌よく話し続け、玲華はその勢いに気圧されそうになる。

そして、自分の思いを素直に口にしている将平から目が離せない。
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