[短編]One-Way ticket~仁の場合~
ピーチフィズ
昔の話だ。


俺がまだガキだった頃・・・


早く過ぎていく時間の中で
俺は「今しかできないことをしよう」
と意気込んで・・・

今思えば、すごく調子に乗っていた。


そんなときにアコと出会った。


長い黒髪
スラリと伸びた手足
ネコのように大きな瞳


出会いはどこにでもあるナンパ


初めは暇がつぶせれば何でもよかったんだ


だけど
すれ違ったアコを見て
俺の細胞すべてがアコに吸収されたみたいに
吸い込まれてしまったんだ。


「今、時間ありますか?」

急いで追いかけてアコを引き止めた。
アコと視線が合う

俺はライオンに見つめられたシマウマみたいに
その場に動けなくなった。


大きな黒目には日焼けした俺が馬鹿みたいな笑顔で写っていた。


「・・・急いでいますので。」

丁寧な断り方。
まるで
どこかの大手の会社の受付嬢。


‘一目惚れ’

たぶん
人生で初めての・・・
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