『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——
  ——*——




日ざしはまだ強い。
だが、夕刻の風には秋の涼気がまざるようになった。胸に吸いこむと、体が軽くなるような心地よさだ。


グレーのウレタン防水層の上にじかに座りこみ、給水タンクの陰に背をもたせる。
昼間の日ざしをたっぷり吸いこんだタンクの熱が、制服ごしにつたわってくる。


目をつむると、そのまま眠りにさそわれそうな陽気だ。


僕は、母親が思っているように女の子とデートしているわけではない。
放課後、屋上の塔屋によじのぼって、こうして一人でいる。

目的は化学準備室をのぞき視ることだ。

校舎はL字型の設計なので、この場所からは永岡先生が巣にしている化学準備室を眺められる。


息子が女の子より、殺人狂に関心をもっていることを知ったら、母親はどんな顔をするだろう。
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