『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——
「・・・返却、ですか・・?」


顔をあげると、カウンターをはさんで司書教諭と視線が合った。
いつぞやも言葉をかわした、下がりぎみの眉をした女性だ。エプロンの胸に留めた名札に目を落とす。


「伊藤、さん」
名を読み上げる。

はい?、彼女はいぶかしげに首をかしげる。


「ええ、返却です。西森を返していただきたくて」

あれは、僕のものなんです。


司書教諭の伊藤女史の眼輪筋が、驚きのかたちに張りつめる。
掛け値なしの、驚愕の感情表現。


表情が変化しても、感情に揺さぶりをかけられても、地味な顔は地味だ。観察しつつそう思う。
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