『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——
真に正常の範疇からはみ出している人間は、伊藤女史にしろ僕にしろ、普通をよそおって生きているのかもしれない。


「狙ったとおり、書き付けた語句や筆跡から、あなたは爆破犯が永岡先生だと思ってくれた。
ひそかに永岡先生を尾けるあなたを、逆に “狩る” つもりだったけど・・・・」

観察しているつもりが、さらに背後から監視されていた、らしい。


「女性のあなたが、男の僕を」

「スタンガンっていう便利なものがあるから。背後からうなじをバチッとやれば、性別は関係ないの」

「なるほど」
彼女の口ぶりからすると、経験がありそうだ。



僕と西森がいつも話をしているテーブルの裏には、盗聴器がしかけられているとのことだ。会話を盗み聞きして、僕の行動を探っていたと、伊藤女史は淡々と語った。

すばやくイヤホンを外してポケットにしまっていた彼女の姿が、記憶のすみをよぎる。



昨夜、自分の仮説の決定的な矛盾に気がついた。

———西森が示唆したように、永岡先生が爆破犯なら、犯行前夜に職場につめているだろうか。
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