『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——
犯行メモを無くす。

そんなうかつなことをと思うが、逆に現実味がある。

時刻表トリックや密室殺人が成立するのは、小説やドラマのなかだけだ。

犯罪者たちは、犯行現場で鼻をかんだりタバコを吸ったりして証拠を残し、あっさり逮捕されている。



「犬で実験。からするとこのターゲットというのは———」


「人だろう」西森のセリフをひきとる。


そうだという確信めいたものがある。


『ターゲット』ということは、犯人は次なる犠牲者の狙いをすでにつけていると読みとれる。


メモの紛失に気づいて、計画を変更するかもしれないが、その可能性は低いと僕はふんだ。


このメモだけなら、かりに警察に届けられたところで、なんの証拠にもならないからだ。


ちなみに届けようなどとは、むろん思っていない。
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