『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——
「前にこの本を読んだ、もしくは借りた人が犯人だと仮定すると——」

西森が、つと視線を泳がせる。


「この高校内だから、1000人は超すな」

「特定するのは難しそうですね」

どうだろうなとつぶやく。



いまこの瞬間にも、同じ校内に爆破犯がひそんでいる。

その可能性に、暗い喜びをおぼえる。

そう、マイノリティーは生きづらい。


僕もまだ見ぬ爆破犯も、絶対的マイノリティーだ。

他者の死になんら痛痒をおぼえず、命を自分の手でもてあそぶ欲望にとりつかれているという意味で。


法と倫理で許されていない。捕まらずに実行するのは難しい。だからやらないだけだ。



少なくとも今のところは。
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