『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——
そろそろ帰る、と腰をあげる。西森も立ち上がる。



並んで歩くと、彼女の頭は僕の肩くらいだ。小柄で、それに似つかわしく線も細い。


すれ違った女子生徒が、ちらりと僕に視線をむけて意味ありげな表情をつくる。隣の西森をつまらなそうに見やって、そのまま通り過ぎた。


「教室の窓は、かならず向かって左側にある」
ふと、思いついて口にする。

「ええ」

「理由を知っているか」

「日本人には、圧倒的に右利きが多いからですね」

「俺も右利きだ」


「それでも、終さんはマイノリティーです」
西森は断言した。


僕は西森の首元に目を落とす。


折ってみたい。そうつぶやく。

「素敵」

西森がほほえむ。



いつもと変わらない放課後だった。
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