Sweet Room~貴方との時間~【完結】
 昨日のこと……。
 19時から事務所の皆と一緒に、居酒屋で慰労会があったのよ。で、大口の仕事が終わった開放感と最近のゴタゴタからのストレスで、ビールをハイペースで飲んだ。あれ、どうやって居酒屋を出たんだ?

「何か、思い出しましたか?」
「ちょっと、黙っててよ! 今、思い出してるんだから」
 絶対、自力で思い出してみせる。お酒で記憶をなくすなんて、ありえない……。

「はあ、多分、思い出すのなんて無理ですよ」
 嫌だ!! 杉山なんかに真実を教えて欲しくない。ホテルに男と女が一晩、一緒にいたんだよ。考えただけで泣ける。でも、服はちゃんと着ている……。杉山もネクタイとジャケットはないけど、服は着ている。

「佐伯さーん、佐伯さーん。説明しますよ」
 説明してくれと頼んでもいないのに、杉山は話し始めた。

「昨日の慰労会のことは覚えていますよね?」
 シーツを握ったまま、無言で頷く。慰労会が始まった時は、まだ素面。そこから記憶がなかったら問題でしょう。

「慰労会がお開きになる時は、もうベロベロで大変だったんですよ。呂律は回らないし、自分じゃ歩けないし。『電車が同じ方向だからお前が責任持って送れ』って、社長に命令されたんですよ」
 杉山は明らかに迷惑だ、という顔をした。
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