Sweet Room~貴方との時間~【完結】
「出ないんですか?」
「元彼から」
 その言葉で杉山の顔が険しくなった。
「あ、切れた」
 電話は切れ、次にメールが来た。

「元彼が会って話がしたいって」
 もう1回、元彼とは何らかの形で話すべきだとは思っていた。でも、昨日の今日で会う勇気もない。答えが見つからないまま「杉山、私……」と、口から言葉が出ていた。

「会って話しをしたいなら、そうするべきです。まだ会えないと思うなら会わなければいいと思います。ただ、時間を置けば置くほど会うことから逃げてしまうこともあります。逆に、時間を置いたからこそ冷静に話せることもあります。これはその人の考え方や性格だから、佐伯さんがどう考えるのか自由ですよ。ただし、会うなら俺も一緒に行きます。会うのが今日じゃなくても」
 私の不安を簡単に取り除かれてしまった。杉山がいてくれるのなら、いつ会ったって一緒。なら今日、会おう。そして全てを終わらせよう、お互いの為に。

「私、会う」
 メールをしてから、待ち合わせ場所のカフェへ向う。途中から杉山に道を教えていたら、少し落ち着くことができた。これなら冷静に話せる、そう思った。
 カフェに着くと見慣れた車が1台停まっている。もう居るんだ。

「杉山はここで待ってて」
 シートベルトを外し、車から降りようとする杉山を止めた。
「いえ、俺も行きます。俺は佐伯さんたちから離れた席に座りますから。困ったことがあったら、声を掛けてください。俺はあとから行きますから」

 杉山の表情から「これだけは譲れません」というのが伝わってきて「うん」としか言えなかった。
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