Sweet Room~貴方との時間~【完結】
 私が先にカフェに入り、中を見回すと、窓際のテーブルに座る彼がいた。
「いらっしゃいませ。お一人様でしょうか?」
 小柄な女性の店員さんがメニューを持って聞いてきた。

「いえ、あそこのテーブルの人と待ち合わせで」
 彼がいるテーブルの方へ行き、向かいに座った。

「ナオ、来てくれてありがとう」
「うん」
 重たい空気が広がる。

「ナオ、昨日は本当にすまなかった。謝って済む問題じゃないことはわかってる。それでも謝らせてくれ。すまなかった」
 テーブルに額が付くんじゃないかなと思うぐらい、頭を下げている。
「そうだね。謝ればいいって問題じゃないよね。でも、謝ってもらった方がまだまし。もういいよ。話したいから、顔を上げて」
 彼はゆっくり顔を上げ、コーヒーを飲んだ。

「ねえ、どうしてあんなことしたの?」
「ナオと別れてからも、ずっと忘れられなくて。何度か会いに行ったんだけど、ナオを見ると声がかけられなくて。そんなことを何度か繰り返してきたんだ」
 私がストーカーだと思ったのはやっぱり彼で、そしてストーカーではなかったんだ。
「一昨日の夜、1人で飲みに行って、それで酔っ払って……」
 酔うまで飲まない人なのに。
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