【続】恋愛のやり直し方
彼女にとっては何でもなかったその一言。


だけど、私にとっては足元から崩れ落ちそうな程驚愕の言葉だった。




『父親に、似ている』



私の父親は、私を虐待し逮捕された男だ。


その男以外に私に父親と呼べる人はいない。



だから、彼女の言ってることが信じられなかった。



確かに、母と私の顔形は似ていない。
私も薄々は父親似なのかもしれないとは思っていた。


だけど、私にとって敬遠すべき存在の父親に私が似ているなんて、母がホントに言ったのだろうか。



それも、嬉しそうに。




「あ……あのぉ」




私の反応は彼女にとって予想外だったのだろう。

先程までの明るい声色とはうってかわって不安げに伺うような声だ。





「母は嬉しそうにそんな話をしたのですか?」




「……はい。お酒が入るとよくそう話されていました。だから私たち娘さんに会ってみたいねって良く言ってたんですけど……」




「……」




頭の中が真っ白。



「あの……森嶋さん?大丈夫ですか?顔色が悪ですよ?先生呼んできましょうか?」



フラフラと立ち上がった私を支えようと彼女が駆け寄ってきたのが分かった。



「だ、大丈夫です。少し疲れただけですから。今日はこれで失礼します。明日また来ます。母のことをよろしくお願いします」




ヨロヨロと頭を下げ、そう言うので精一杯だった。




ガラガラと重たいドアを開け、「ホントに平気ですか」という彼女の声には答えず病室を後にした。
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