【続】恋愛のやり直し方
すると、そんな私の内情を知ってか知らずか友田ははあーっとため息を吐き、ジトリと私を見つめる。





「綾……俺の仕事なに?」


呆れた。とでも言いたげな声。




「……小説家でしょ」




怯んで声が掠れた。



「そうだよ。物書きはさ、幸い、場所と時間を問わないの。この頭と書くものさえあればそこが仕事場」




「あ……そうだね」




「分かったか」とイタズラに笑って私の頬をつねる。





ちょっと考えれば分かることなのに、完全に囚われていた固定概念。




思えばかつての夫、実に実家近くに住みたいと言ったとき、「通勤する俺の事を考えろ。お気楽なお前と違う」と、物凄い剣幕で怒鳴られたことがあった。




きっと、知らず知らずの間に、今もその記憶が私の中に植え付けられていたのだろう。





「ごめんね。考え足りなかった」



「分かればよろしい」
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