狂妄のアイリス
第七章「ほんとうのおはなし」

青年

「鉢植えをお探しですか?」


 商店街にある花屋の店先で、ピーコートの青年は若い女の店員に声をかけられる。


「いえ、お見舞いなので……鉢植えはマズいですよね」

「そうですねー。根がついているものは寝付くに繋がって、入院が長引くと言われてますから」


 苦笑して言葉を交わすと、店員は青年が眺めていた鉢植えより他の花を勧め出す。


「花瓶の花を入れ替えたいんで、籠とかはいらないんですよ」


 花瓶のいらないアレンジを勧める店員に、青年はそう断りを入れる。

 でしたら、と店員は一本ずつ売られている花を示した。


「お好みで選んでいただいても、すぐにお纏め出来ますよ。お見舞い用でしたら、この辺りが花粉や香りが少なくてオススメです~」

「うーん……」


 青年は唇に拳を当てて考え出す。
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