狂妄のアイリス
 一人と一匹が去ると、公園には私一人っきりになってしまった。

 寒空の下、頬が張り詰めるように冷たい。

 強張った手が震える。

 これは、寒さのせい?

 それとも……

 タートルネックの中に、凍えた手を忍び込ませる。

 歪な肌の感触。

 頭が割れそうに痛い。

 皮膚はこんなにも寒さを感じているのに、体の中が燃えるように熱い。

 喉に違和感があり、それを排出しようと咳が出た。

 もう帰ろうとブランコから立ち上がる。

 なのに、足に力が入らず膝から崩れ落ちた。

 鎖にしがみついてなんとか体勢を保つけど、その手にも力が入らない。

 錆の臭いが鼻を突いて、吐き気がする。

 ゆっくりと、手から鎖が離れていった。

 ぐるりと世界が回る。

 私は地面に頬をつけ、倒れ込んだ。

 意識が暗転する。

 意識が保てない。

 この暗闇の中で、私は夢を見る。

 とても悪い夢。

 それとも、過去の記憶? 

 わからない。

 わからない……
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