狂妄のアイリス
「……朱音は、どうしてる?」
朱音、と名前を出したとたんに青年から方の力が抜けた。
まるで安定剤のような、少女の存在。
蛍に対して、妹だと言った少女の名前。
「日向はいっつも、そればっかりだね」
人影は、再びニヤリと笑ってブランコをこぎ出す。
「当たり前だ。俺はずっと、朱音を守るためだけに生きてきた」
「それが、このザマだけどね」
少し揺らすどころじゃなく、大きく揺らしてブランコを漕ぐ。
「朱音は、俺を恨んでいるだろうか」
「さあね。僕らは朱音とはまったく別個の存在だから。他人の心なんて、誰にもわからないさ」
大きく漕いだブランコが、もっとも高くなったその瞬間。
錆の匂いが移った手を、鎖から離す。
体が宙を舞い、ふわりと着地する。
「マフラー、返すよ。オニイチャン」
立ち上がった人影は、皮肉気に嗤った。
朱音、と名前を出したとたんに青年から方の力が抜けた。
まるで安定剤のような、少女の存在。
蛍に対して、妹だと言った少女の名前。
「日向はいっつも、そればっかりだね」
人影は、再びニヤリと笑ってブランコをこぎ出す。
「当たり前だ。俺はずっと、朱音を守るためだけに生きてきた」
「それが、このザマだけどね」
少し揺らすどころじゃなく、大きく揺らしてブランコを漕ぐ。
「朱音は、俺を恨んでいるだろうか」
「さあね。僕らは朱音とはまったく別個の存在だから。他人の心なんて、誰にもわからないさ」
大きく漕いだブランコが、もっとも高くなったその瞬間。
錆の匂いが移った手を、鎖から離す。
体が宙を舞い、ふわりと着地する。
「マフラー、返すよ。オニイチャン」
立ち上がった人影は、皮肉気に嗤った。