3つのR
上から声がして、私は彼を見上げる。逆光で眼鏡の奥の瞳は見えなかったけど、口元は柔らかく微笑んでるようだった。
「そういえばまだ名前も言ってなかったな、と思って」
立ち上がって私は急いで紹介を返した。
「ほんとですね。私は阿達と言います」
顔見知りで雑談をする程度の知り合いは、お互いの仕事の話はしても名前を名乗ってないってことってよくある。私の名前を聞いて、徳井と名乗った男の人は頷いた。
「土曜日もやってるんですね、ゴミ拾い」
「はい、もう日課になってしまって。私、会社勤めではないので曜日が関係ないんですよ。毎日同じことの繰り返しです」
その返事に彼ははは、と笑った。
「それ判りますよ。僕も同じだし。朝起きて、クリの散歩、仕事、散歩、仕事、合間に食事して寝る、みたいな」
「そうそう、それです」
再度しゃがみ込んでクリちゃんの頭を撫でる。ふわふわの感触についニッコリした。
「・・・ああ、可愛いですね。私もペットを考えてみようかな~・・・」
徳井さんもしゃがんでクリちゃんの体を撫でながら、頷いた。
「いいですよね、生き物がいるって。一人暮らしで在宅仕事だと、人と全然話さなくなるんですよ。それで寂しくてふらっと寄ったペットショップでこの子に会って。心の安定剤です」