3つのR
「あ、それ判ります。家に一人でいると独り言増えますよね」
「増えますね」
「言わなくていいことまで全部口に出して言うというか」
「そうそう」
クリちゃんは相変わらず喜びを全身で表現しながら二人の顔を交互に見ていた。・・・ペットかあ・・。いいかもね、私はぼんやりとそう思う。
家に帰ったら、姉に相談してみようか―――――――――・・・・
「あの」
徳井さんが声を出した。ついぼーっとしていた私はハッとして急いで笑顔を作る。
「はい?」
彼は私の方をみずにクリちゃんの頭を撫でながら言った。
「もし良かったら・・・食事でも食べに行きませんか。この後、用事がないようでしたら」
「え?」
「犬の・・・ペットの話なんかもしたいですし、僕の事情であれなんですけど一人で食べるのにうんざりしてきてまして」
・・・・あら。あららら!私ったらお食事に誘われちゃった!・・・どうしたんだろ、この春はこれで人からご飯に誘われるのは2回目だ!急速に頭の片隅でそう理解して、私は口が開いてしまった。
驚いたのだ。静かで変化のなかった5年間を過ごしてきて、いきなりの物事の乱発。新しいことを始めると、ここまで変わるのか、という驚きがあった。