3つのR
「まだ呆然としてるね~。元気だった、ジュンコさん?あれから熱は出してない?」
「あ、ええと、はい。お陰様で」
「それは良かった。やっぱり俺が毎日山神様にお祈りしてるせいだよ、それ」
龍さんがにやりと笑ってそういう。山神様・・・また出てきた。私はようやく口元を緩めた。
「お祈りしてくれてたんですか?ありがとうございます」
「だって、やっぱりレディは笑ってるほうがいいからね」
そう言って、私より遥かに素晴らしい笑顔で龍さんはそこに立っていた。
「それより潤子!右田さんってシェフだったのねえ!何で早くいってくれないのよ~!いきなりすんばらしい料理が出てきて驚いたわ~!」
え?興奮する姉の指差すほうを見ると、ダイニングの小さなテーブルの上に並んだタッパーの数々。その中には色とりどりで実に美味しそうな惣菜が詰め込まれていた。
――――――――わお。
この間私が食べさせてもらった洋食とは違って、今日は出しまき卵に煮魚に竹輪の細工にと手の込んだ和食の団体さんだった。にんじんや栗の綺麗な明るい色が映えている。・・・すごーい、本当に何でも作れるんだな、この人。
「龍さん、わざわざ作ってくださったんですか?」
私がドアのところにいる龍さんを振り返ると、彼はふんぞり返っていた。こう、バーン!と。腰に両手を当てて、実に偉そうに。