3つのR


 そこでやっと私は彼の外見の変化に気付く。

「あ、髪が短くなってる」

 私のこの発言には二人の人間が盛大なブーイングをした。勿論うちの姉と右田龍治さん本人だ。つまり、私以外の全員。姉は、私が昨日言ってたでしょうが!あんた聞いてなかったの!?で、龍さんは、短くなってるなんて事実の描写じゃなくて、格好いいです~!とかいえねーの、だった。

 ・・・煩い。眩暈がするわ、この二人が揃うと。

 私は額を右手で押さえたポーズで、何とか龍さんに言った。

「・・・大変格好いいです。素敵です、短い髪も」

「そうだろうそうだろう!チャラいって何回も潤子さんが指摘するからさ~俺ってば一念発起して切っちゃったよ!これが愛の力だねえ!」

 ・・・え?私が「目立ちますね」って言ったからなの(チャラいなどとは言ってないと思うって抗議するべきか悩み所だ)?まあとりあえず愛の力云々は聞かなかったことにするとして。

「うちの店長なんかは、もうちょっと長くなれば俺が編みこみをしようと思ってたのにぃ~って不満そうだったけど!でも女性陣には受けが最高!」

 わはははと笑う龍さんを苦笑して眺める。龍さんの上司の店長さんって一体どういう人なんだろう。言ってることは頓珍漢というか、やたらと変わったこと言うけれど(編みこみって・・・それが出来る男性には会ったことがないわ)、でも怒ったら怖いんだよね?

 そうか、やっぱり一度、あのお店でちゃんとご飯を食べてみたいな―――――――――――

 考えていると、姉がパンと両手を叩いた。


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