3つのR
あの男性も私とは違うが自宅で仕事をしていて、息抜きも兼ねて愛犬の散歩をしているのだそうだ。時間に自由がきくからあんな時間に公園にいたのね、と大いに納得する。元夫がほとんど家にいない人だったので、男性がいつでも家にいるというのはどういう感じなのか想像が出来なかった。
子犬のクリちゃんが懐いてくれるのが可愛くて、自分から近寄っていくこともある。あの男性も今ではパッと笑顔を見せてくれるようになっていた。それは、愛嬌がありまくりだった元夫や、やんちゃで企んだような笑顔をする龍さんとは違う、落ち着いて、清涼感があるというか、サラサラしたイメージの笑顔だった。
名前も聞いていない、そんな程度の知り合いがたくさん出来た。それだけでも、ゴミ拾いは正解だったな、そう思って私は満足感に浸っていた。
このまま体力ももうちょっとでもついて、この夏も倒れなければいいな、そう願って。
そんなある夜、晩ご飯を食べながら、姉がにやりと笑って言ったのだ。
「あ、そういえば今日ね、あの人にあったわよ」
「え?」
私は茶碗を持ったままで首を傾げる。・・・あの人?はて?
私の反応にちょっとがっかりしたらしい姉が唇を突き出して言った。
「あの人よ!信じられない、これでピンとこないなんて――――――ほら、ピアスの、タレ目のイケメンよ!」
「あ、龍さん?」
驚いた。一体どこで会えるというのだろうか、と思って。あの人の行動範囲と私達姉妹の行動範囲は多いにずれているのに違いない。職場が案外近かったことにビックリしたほどだけど、姉は勿論そんなことは知らないはずだ。