3つのR
あの病院で会ってからかなりお世話になってしまったあの日から、既に一ヶ月越え。壁に貼った白い紙のお陰で忘れることはなかったけれど、思い出して笑うというほどではなくなってきていた頃だった。
姉は興奮した顔で、お箸をおいてから話す。
「それが結構近くに住んでるらしくって、商店街で偶然にね!潤子は行ったことある?あっちの私鉄の、駅前に結構長い商店街あるでしょう、昔からあるような。あそこの郵便局に行ってたのよ、今日」
「あら、あんなところまで?」
私もお箸を置いた。ずっと引きこもって仕事をしていた姉が久しぶりに駅前までって外出したのだ。それは自宅から近いほうの駅前だと思っていたのだけれど。あっちまで行ってたのね。
「そうそう、こっちの郵便局が何かすごい混んでたからイライラしてあっちまで。って、そんなことはどうでもいいのよ!」
お喋りの上に気の短い姉が両手で言葉を振り払う。リアクションが大きいのは父親譲りだ。
「とにかくあの商店街で、郵便局から出てきたら、龍さん・・・えーと、右田さんだっけ?その彼が向こうからやってきてねえ!」
・・・ああ、そうか。私は頷いた。あの商店街の東側、ちょっと奥に引っ込んだところにあの居酒屋があるのだ。酒処山神。姉にはまだ言ってなかったけど、きっと龍さんは出勤前などだったのだろう。
姉は嬉しそうにまだ話す。
「それが彼、髪の毛切っててさあ!長めの茶髪もいい感じだったけど、やっぱりちょっといかついでしょ?色は変わらないけど短くなってて、更に色気が増してたわ~!」