3つのR
「・・・予定があったら無理って言うでしょ。別に私からどうぞいらしてくださいって胸倉つかんで言ったわけじゃあないんだから」
あんたは全く、そう言って姉は肩を竦める。姉なら簡単に実行しそうだ、と思ったことは内緒にしておこう。とにかく龍さんから行きますと言ったのは本当らしい。
「喜びなさいよ、またイケメンに会えるんだから!」
「え、あ、うん」
「私は楽しみよ~」
踊りだしそうだった。・・・まあ、私は外で色んな町の人と話すけれど、姉はまた締め切り前で家に缶詰状態なことが多いのだ。きっと他人との会話にも飢えているのだろう。
り、龍さんが来るんだ・・・。その時からちょっと緊張してしまった私だった。そわそわして、何だか落ち着きがない。それでそんな自分が嫌で、その夜はさっさと寝てしまうことにしたのだ。
布団を被って目を瞑る。
だけどいつまでも暗闇の中に浮かび上がるのは、汗だくの龍さんがにっと笑った顔だった。
連絡先も知らないから、彼がいつ来るのかは判らなかった。
だからとりあえず私と姉は普段通りの土曜日を過ごすことにした。つまり、いつもと同じだ。私達には曜日はあまり関係がない。