ラベンダーと星空の約束
 


荷造りの途中、
本を手にしばらく考え込んでいた。


亀さんの部屋で見た、新入寮の子の名前が引っ掛かっていた。



 ― 月岡 紫 ―




“紫(ムラサキ)”と書いて“ゆかり”と読むとは知らなかった。

辞書を引いてみたが、
手持ちの辞書に“ゆかり”と言う読みは書かれていなかった。



当て字か…

大ちゃんは紫(ムラサキ)ちゃんと言っていたけど、

あのメッセージカードに書かれていた“紫”の読み方も、

ひょっとして“ゆかり”……



大ちゃんの捜している少女は、
新入寮の“月岡紫ちゃん”だったりして……



いやいや、まさかね。

そんなドラマチックな事を考えた自分が恥ずかしくなった。



こんな恥ずかしい予想は大ちゃんに話す気になれない。

高確率で外れだろうし、下手に期待させると可哀相だ。



それにしてもなー
紫(ムラサキ)ちゃんは何でフルネームで名前を書かなかったんだよ。



あれじゃ大ちゃんが言ってた様に、
名前なのかその一部なのか、愛称なのか、

それとも暗号めいた物なのか、分かんないじゃん。



まぁ、その子だって、
まさか自分を忘れられるとは、思わなかったのだろうけどさ……



すっきりしないな…

僕まで紫(ムラサキ)ちゃんが何者か気になってきたよ…




 ◇


大ちゃんと紫(ユカリ)ちゃんが初めて会った…正確には再会した日、

あのドラマチックな予想は、やっぱり外れなんだと思ったんだ。



忘れてしまった大ちゃんは別としても、
紫ちゃんも巡り逢えた的な反応は示さなかったから。



今思えばそれは無理もない話し。

下半身丸出しの、あんな変態っぽい姿で現れても、

5年前の大ちゃんと重ねることは出来なかったのだろうけど……






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