ラベンダーと星空の約束
テニスまで優し過ぎて、ポイントを取れない流星だけど、
流星がラケットを振る度、キャーキャーと黄色い歓声が湧く。
リードしてるのは田島君なのに…
思わず勝っている彼に同情してしまう。
気の毒な彼は、落ち込む事なく、気迫を上げて行った。
1ゲーム目はあっという間に田島君が取り、
2ゲーム目も押しているのはやっぱり彼。
圧倒的優位に立つのに、その表情はどんどん険しくなり、怒りのボルテージが上昇している。
あ…勝っているから、そこまでしなくても…
流星ファンの子ばかりでイライラするのは分かるけど、あまり流星を虐めないで貰いたいな……
そう思いながら、もうすぐ終わりそうな試合を見ていた。
すると、隣にいた瑞希君が、なぜか私の背後に移動し、耳元に口を寄せ話し掛けてきた。
「紫ちゃん、このゲームは大ちゃんに取らせたいと思わない?」
「思うけど…無理だよ。
力量的に向こうが上だし」
「でもさ、大ちゃんのテニス姿をまだ見ていたいと思うでしょ?
勝負を3ゲーム目に持ち込ませたいよね?」
「そうだけど…」
「だよね。こんなに一生懸命スポーツしてる大ちゃんは貴重品だよね。
じゃあ…これは大ちゃんの為であり、君の為でもあるから怒らないでね?」
「え?」
流星が綺麗なフォームで優しいサーブをすると同時に、
瑞希君が私のチアガールのスカートを、思いっ切り捲り上げた。
まさかな行動に叫びそうになったが、片手で口を塞がれ、声を出せなかった。
「しっ! 大ちゃんまで気を取られたら、作戦台なしじゃん。少し我慢して」
左手でスカートを押さえてみたけど、
その左手ごと、瑞希君の手が容赦なくスカートの裾を持ち上げる。
流星も周囲の女の子達も、全く気付いてない。
だけど、一人だけ信じられないといった表情で、私から目を離せずにいる人がいた。