ラベンダーと星空の約束
それは田島君。
彼はあんぐりと口を開け、ネットの向こうから私を凝視し、固まっている。
そんな彼の前でバウンドしたテニスボールは、
彼の横を抜け、フェンスに当たり、ガシャンと大袈裟な音を立てた。
「大ちゃんやる〜!
サービスエース〜!」
この時、瑞希君の手は、既に私の口からもスカートからも離されていた。
チアガールのスカートの下はスコートなんて履いていない。
普通のいつものパンツを、田島君に見られてしまった……
田島君はまだ固まっている。
流星は、相手がなぜレシーブしないのかと、首を傾げていた。
「瑞希君!
何やってんのよ!」
「怒らないでって言ったのにー
作戦だからしょうがないじゃん。
あっほら、また大ちゃんがポイント取ったよ。
前見てないと、いいプレー見逃すよ?」
「もう、変な事はしないでよ?」
「しないしない。
これは1回やれば、効果が持続するから大丈夫。
後はこうやって、君にくっついてればOKだから、気にしないで」
何がOKで、何が気にしなくていいのか分からないけど、
瑞希君は私の背後にくっついたまま、抱きしめる様にウエストに両腕を回してくる。
それからの試合、スカートを捲られていないのに、
なぜか田島君は、集中力を欠いてミスを連発した。
ボールを追いかける合間にチラチラこっちを見るから、やけに視線が合う。
そうか…
こうやって、瑞希君がまだ私にくっついているから、
またスカート捲りがあるんじゃないかと思い、こっちを見てしまうのか…
流星が2ゲーム目を取った後に、やっとそれに気付いた。
フェアじゃない勝利なんか流星だって喜ばないだろうし、瑞希君に一喝入れ、私から離れさせた。
その後は調子を取り戻した田島君に3ゲーム目を取られ、やっぱり流星は1回戦で敗退した。
負けても私は大満足だった。
流星がスポーツをしているこの光景を見れただけで、心がほこほこする。
しかも一生懸命練習して、結構いい勝負になったから凄く嬉しい。