ビターオレンジ。
「はぁ…はぁはぁ…っ」
苦しくて…。
こんな時は誰かの傍に居たいと感じて。
ドアノブへと手を伸ばした。
誰か…誰か助けてって。
何度も聞こえる私を責め立てる声が迫ってくるの。
真っ暗で、前も後ろもわからない闇へと引きずり込まれてく感覚がして。
そんな時、本宮君がいつも助けてくれた。
だけどもう今はいなくて。
こんな私だから嫌になったのかな。
なんで今日は来てくれなかったんだろう。
そういくら考えても分からなかった。
「はぁはぁ…っはぁ」
苦しさは増していく一方で、
胸を抑えていた手が雨に濡れて真っ赤になっていた。
薄れていく意識。
目の前がボヤけてきて…
「…たす…け…」
言葉も最後まで言えなかった。
プツリと脳内で音が鳴って痛みさえ感じないまま僅かな振動が伝わってきた。
真っ暗な闇の中で私は泣いていた。
助けて。
助けてって叫びながら。
何度も転んで膝や色んな所に傷ができて。
それでも走って走って。
前後左右上下どこかわからないまま、
迫ってくる声から逃げていた。
『…たす…け…て』