ビターオレンジ。
その日の放課後、
本宮君が屋上へ来る事はなかった。
あたりは真っ暗で…いつも見える星は曇り空で見えず、とても寒かった。
次第に雨が降り出して、パーカーのフードを被ると少しだけ安心する。
だけどあの日…咲さんが亡くなったあの日から雨の日はどうも怖いんだ。
冷たい水が突き刺すように何度も私を濡らすから。
その度にあの光景と何とも言えない恐怖が私を襲った。
寒さとその恐怖で震える体はあたしのモノではないようで…
凄く凄く怖かった。
泣きたくなって…
最近は涙もろいななんて、どうでもいい事を考えて紛らわせた。
だけど、それも直ぐに効かなくなって。
本当に私は弱いなって。
悔しかった。
早くなる鼓動も、早くなる呼吸も。
咲さんが亡くなった後と何も変わってない。
変われたんだと勘違いしていた自分が嫌と言う程…憎く感じて、
じわりと心に痛くて染みる、
苦い想いが広がっていった。