好きって気づけよ。
ため息をついて、また落ち込みムードに入りそうになった。
そんな俺に、栗原はやれやれといった感じで肩をすくめてみせる。
「後悔さきに立たずっていうより、後悔あとを絶たず。のが、いまの坂野くんにはしっくりくるね」
「なに、ケンカ売ってんの。こうなったのお前のせいなんだけど」
「心愛ちゃんをおそったのは自己責任じゃん。ほんっと坂野くんってしょうがない男だねぇ」
机の横にひっかけていたかばんをつかむと、入口に歩いて行く栗原。
帰んのかよ。
べつにどうでもいいけど……。
そう思いながらながめていると、栗原は入口付近で立ち止まって、こちらを振り返った。
なにかをたくらむような、満面の笑みで。