アイドルに恋をして

(はぁ…)


思わずため息が出る。


「すいません。少しよろしいですか？」

その時、後ろから声をかけられた。



「えっ？」


足を止めて振り返ると、そこにはスーツを着た1人の男性。


「…なんですか？」


(なんか、めっちゃ怪しい)


美咲は瞬時に思った。



その男性は、胸ポケットから一枚の名刺を取り出して目の前に差し出した。



怪しいと思いながらも、一応目を通して見る。



「株式会社ラビット、統括マネージャー…早川正志？」


なんだこれ？



「君、どこかの事務所とかに入ってる？」


「はっ？」


事務所？


その男性は、ニコリと微笑んでゆっくりと近づく。



これは、もしかしてヤバイ系？


事務所とか言ってたし…

どうしようどうしようどうしよう！


このままこの人に捕まったら、どこかに連れて行かれるかも⁉︎


ここは…



走る‼︎



考えた瞬間、美咲は猛ダッシュで駅に向かって走り出す。


「あっ！ちょっと、待ってくれ‼︎」



男性は、不意を付かれたのか走り出す美咲を捕まえようと慌てて腕を伸ばす。


しかし、美咲の走りが意外と早く捕まえることが出来なかった。




ヒールを履いていることも忘れて無我夢中で走る。



いつも歩いてる道を走り、慌てて改札を通る。