落雁
司が部活に行くなんて、珍しい。
今日は剣道部に顔を出すつもりだったけど、ボクシング部に顔を出すか。
そうして、授業後はやって来た。
あたしが部室に着くと、既に司はそこに居た。
ごっつと喋っているみたいだったけど、他の部員はあんまり司を良くは思っていないようだ。
きっとそのほとんどは、プライドが傷付けられたから。
その証拠に、負けることに慣れているみっきーは前向きに捉えている。
「弥刀っち」
ごっつが笑顔で立ち上がった。
目付きの悪い目を更に細めているから、全然笑ったように見えないのがすごい。
親近感がありすぎるから、嫌いじゃないけど。
「今日はジムの日?」
「そう。大会近いから、そんなに予約とれないんだよなー。今日はひっさびさ。と言うか弥刀、予定表を見なさい」
「ないよ。なくした」
困ったように笑うごっつ。
確かに、予約が取れないのは仕方のないことだけど、大変だ。
みんなが練習用のバッグと学生鞄を担いで、どんどん部屋から出て行く。
大会が近いから、1分1秒でも早く行動しているという熱意に心が熱くなる。
「いや、僕が気に入らないんでしょ」
その事を司に言うと、しれっと答えられた。
「自虐?」
「僕って案外、いじめられるのがすきなんだよね」
「…嘘つけ」
司が鞄を持ち直した。