落雁

まあいい。
どうせ、湿布を貼っていれば治るだろう。
それより、さっきの司の言葉の意味の方が気になる。

「お前のことを、父さんに聞けばいいと?」
「あぁ、聞いてたんだ。聞き流してくれればよかったのに」
「馬鹿言うな。あたしは聞き漏らさない。なんでお前のことを、父さんに聞かなければいけないいんだ」
「照れるじゃん、そんな今更自己紹介だなんて」

思わず眉をよせた。どこまでもとぼけやがって。
確かに、父さんに聞いたほうが早いかもしれない。
そのほうが、当主にした本当の意思が聞けていいかもしれない。

「いだっ?!」

どん、と司があたしの右肩を押す。
骨が軋むような音が、あたしの体の中だけに聞こえる。

「ごめんごめん、本当に痛いんだ」
「アホか!」

笑ったままの司を睨み付ける。

そうしているうちに、司は立ち上がった。

「まぁ、とりあえず帰ろうか。弥刀ちゃんはそこに居てね。荷物持ってくるから」
「あたしも行く」
「顔、怪我してる弥刀ちゃんをあの部長に見られたら、僕が殺される」

は、と気付く。

そうだった。本来のルールは、司が一歩的に攻撃されるだけのルールだった。

口篭ったあたしを満足気に見て、司は笑顔でトレーニング室から出た。


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