落雁





ここを曲がって、真っ直ぐ。

金髪が言っていた“西高”はそこまで遠くなかった。
少し歩いたら着いたくらいだ。

話によると、相手はただの喧嘩好きな不良グループ。この間喧嘩をふっかけられたらしい。
そんなことはあたしにはどうでもよくて、とにかく司を探さないと。

とはいえ、争いにまきこまれるのも至極避けたい。
あたしは一応絶対安静の身だ。それに今誰かと喧嘩して勝てるような気もしない。

校門のすぐ横に、西高校と言う字を確認して、あたしは敷地内に入った。

まず目に入ったのは校舎。随分古い造りで、ざっと見築80年は経ってそうだ。ざっと見。
そんな貫禄ある校舎の横を通り抜ける。

時計を見ると、午後8時。
部活動をしているあたしから見ればそう遅い時間ではないと思ったけど、校内に生徒らしき人は1人も居なかった。
と言うか、人気がない。しんみりとしている。

おかしいなぁ、喧嘩とかしているはずならもっとうるさくてもいいのに。

敷地内をぐんぐん歩いて、体育館らしき建物の前に来た。
しかしまた、古そうな造りだなぁ…。

と、ぼんやり考えているところだった。

がつん、と鈍い音がした。

「?!」

周りを見渡す。
何か物が落ちたような形跡は無い。

あたしは足音をなるべく立てないようにして、体育館の裏に回った。

そうだ、あたし一応不法侵入なんだ。
第一制服だし、すぐに学校がばれてしまう。先生とか居なければいいんだけど。

そんな平和なことを考えていたあたしの脳味噌は、すぐに停止した。

何かが動いていた。

体育館で身を潜ませながら、その動いているものをよく見てみた。

人だった。
人が地べたに寝そべっていて、蠢いているような、悶えているような。とりあえず、土の上をごろごろと動いていたという表現には相応しい。

男だ。学ランを着ている。ここの生徒かもしれない。
顔から血を流している。いや、どこから出血しているのかは分からない。
それを拭ったのか、投げ出された手のひらは血がべっとり付いていた。

助けないと!

「大丈夫ですか、」

あたしは物陰から抜け出して、倒れている男に近寄った。

そして、気付く。

物陰からは見えなかっただけで、倒れていたのは、この男1人だけではなかった。

ざっと見渡しただけで、10数人は居る。
全員黒い学ランを着ていて、頭や顔やらから血を流して倒れている。

あたしは顔を上げた。


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