落雁
□ □ □
寒い。
肩が冷える。
あたしは目を開かないまま、意識が戻ったのを感じた。
腕を伸ばす。
堅くて、温かいものに触れたのを感じて、それに抱きついた。
それに応えたのか、温かいものが肩を包んでくれる。
あぁ、満足。
あたしは目を開いた。
え、ちょっと待って、あたし何に抱きついてんの?
そして何に抱きつかれてんの?
目を開いても真っ暗で、何も見えない。
鼻が何かと触れ合った。
甘い匂い。
「つ、かさ!」
心臓が飛び跳ねて、それに同化して思わずしがみ付いていた手を放してしまった。
何と言う事をしていたんだ。
「起きたの?弥刀ちゃん」
上から降ってきたのは、間違いなく司の声だった。
「おおおおおお起きたも何も、あたし何して…」
ぐい、と抱きついていた司の体を押し返すも、強く抱きこまれていて離せない。
「もうちょっとだけ」
あたしを宥めるような優しい声がして、思わず手を緩めた。
代わりに、息ができないくらい強く抱きしめられる。
「いいいいいいいいたい、ちょ、肋骨…」
「あぁ、ごめん」
ぱ、と力が緩まった。
あたしは冷静に考えた。
えっと、司を庇って無様に殴られて、それで気絶して…
「…ここ、どこ?」
「僕の家」
「あたし、何して…」
「僕と寝てた」
「今何時」
「夜中」
全く理解できなかった。
寝ぼけているのかもしれない。
「あたし、気絶したよね?」
「ここまで連れてきてあげたんだよ」
あぁ、なるほど。
え、でもなんで一緒に寝てるの。しかも真夜中って。どんだけ寝てたんだあたし。
「なんでいっしょに寝て…」
司は何も言わないであたしを抱きしめた。
「もうちょっと」
あたしは2回目のその発言に耳を疑った。
こいつ、さっきまであんなに尖ってたのに。
なんでこんな甘えてるんだろう。
まぁいいか。考えるのも面倒くさい。しばらくこのままで居よう。
温かいし。
無意識の内に司の体に寄り添った。