落雁
そしていつの間にか寝てしまっていたとき。もうかれこれ数時間経っているだろうか。
弥刀ちゃんに背を向けて寝ていたけど、冷たい腕が体に回ってくる感触で、目が覚めた。
「…」
後ろを振り向いてみる。
弥刀ちゃんは寝ている。
「…大胆だなぁ」
寝返りをうって、弥刀ちゃんの方向を見る。
すると、頭が僕の胸に転がり込んできた。
一瞬固まってしまった。
どこかの尻軽女がこれをするのは分かるけど、あの堅物弥刀ちゃんがこんなに女の子らしい動作をするだろうか。
いや、ない。
恐る恐る、肩を抱きこむようにして彼女の細い体に腕を回す。
温かい。柔らかい。丁度いい。
また意識が飛びそうになったとき。
「つ、かさ!」
弥刀ちゃんの声が下のほうでした。
僕にしがみついていた手が離れる。
「起きたの?弥刀ちゃん」
「おおおおおお起きたも何も、あたし何して…」
よほどテンパっているようだ。
寝起きにしては声が高い。
ぐい、と体を押された。
それを無視して、僕は弥刀ちゃんの体を強く抱きしめた。
「もうちょっとだけ」
すごく、寝心地が良かった。
隣に人が居るだけで、随分違う。
心地よかった。
「いいいいいいいいたい、ちょ、肋骨…」
「あぁ、ごめん」
呻く弥刀ちゃんに気付いて、僕は力を緩めた。
「…ここ、どこ?」
「僕の家」
「あたし、何して…」
「僕と寝てた」
「今何時」
「夜中」
そういうと、弥刀ちゃんは考えているのか黙り込んだ。
「あたし、気絶したよね?」
「ここまで連れてきてあげたんだよ」
「なんでいっしょに寝て…」
核心をつかれた。
そりゃあそうだ。起きたら僕が居るんだもん。当然の疑問だ。
だけど、この時間を終わらせたくない。
「もうちょっと」
そういうと、弥刀ちゃんは浅く溜め息をついて、僕に寄り添った。
なんだかんだいって、今日は素直だな。
いや、ただ寒いだけかもしれない。