落雁

りんご飴が売っている屋台の行列に4人そろって並ぶ。

前の方にも同じ制服を着た生徒が並んでいる。

「りんご飴食べたらどうする?何食べる?」
「芽瑠よく食べるねー」
「焼きそばも食べたでしょー、たこ焼きも食べたでしょー、綿飴食べたでしょー、あと何食べたっけー」
「冷やしきゅうり」
「そうそれ」
「まだまだ食べるよー」

芽瑠はけらけらと笑う。

そうしている間に、順番が回ってきた。
芽瑠意外は迷わず小さめのりんご飴を頼んだ。

「みんな小食だなー」
「いや、このあと昼ごはんあるしね」
「今食べたらお昼のカレーがもったいないわ」
「今は今、お昼はお昼」

満面の笑みで飴を受け取って、芽瑠はそれを舐める。

芽瑠のより一回り小さめのそれを受け取って、あたしも飴を舐める。
懐かしい味がした。

かなり小さいとき、屋台で飴を買ってもらったような気がする。
その時は父さんもまだ若くて、肩車してもらったっけ。
きっと今してもらったら、父さんは虫の息だろう。

「あ、神谷くん」

アミちゃんの何気ない一言につい、反応してしまった。

「え、ほんと?あ、ほんとだー」

その声につられて芽瑠とマナちゃんが視線を向こうの方に向ける。
あたしもちらりとだけ見てみた。

アミちゃんの言葉通り、司は同じクラスの男子と、楽しそうに話していた。
本人が気付いているかどうかは知らないが、随分女の目を引くやつだと思った。
屋台に並んでいる女性も司を一瞥した。

「ねー、ほんと漫画みたいな転校生だよね」
「それ思った!すごく目の保養」

3人が盛り上がる。
会話が女子になってきたな、と感じる。

「でもうち、もっと筋肉隆々の男らしいひとが好きなんだよねー」
「芽瑠はずっとそれだよね」
「マッチョ好きだ」

ふふふと芽瑠は笑う。

「弥刀ちゃんは?」
「好きな人とかいるの?」

マナちゃんアミちゃんの熱い視線を感じる。

「いや、好きな人とか特には…」
「弥刀ちゃんって、神谷くんとよく話してるよね」
「え、なになにー??実は…」

マナちゃんアミちゃんが嬉々としている。
ふざけているのか、芽瑠も興味津々だ。

「いや、神谷は別に…」
「だよねー、神谷くん、誰が告白しても付き合わないしねー」
「そうなの?」
「そうそう。3年生のカスミ先輩振ったらしいよ」
「うわー!学校イチ可愛いカスミ先輩振るってすごい」
「好きな子でもいるのかなー」

芽瑠がのほほんとした声でそう言った。

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